朝、庭に出たらまた葡萄の皮が落ちていた。
ちょうど石の角のところに、黒くてぺらっとしたのが一枚。よく見ると、他にも二、三枚。ああ、今年も来たな、と分かる。これはうちに毎年来る“あいつ”の仕事だ。



犯人はハクビシン。
毎年この時期になると、我が家の葡萄棚にやってくる。しかも、実の熟れ具合をよくわかっているらしく、まだ早い段階では決して手を出さない。こっちが「そろそろ収穫かな」と思う頃、ちょうどいいタイミングで現れて、一番甘くなった実から食べていく。しかも全部は食べない。中身だけ食べて、皮だけを律儀に残していく。
この食べ方がまた綺麗で、まるで何かの儀式のようだ。
葡萄の皮が、しわしわに乾いて、あちこちに落ちている様子はちょっとしたアートにも見える……いや、掃除するこっちとしては芸術どころじゃないけれど。
たぶん、同じ個体なんじゃないかと思っている。
もう何年になるだろうか。数年前から毎夏、静かにブドウを食べにくるこの常連さんは、こちらの生活リズムも完全に把握しているらしい。昼間は決して姿を見せず、夜の間に来て、朝にはいない。そして食べ散らかしたあとの皮だけが残されている。
「食べといたから、片づけよろしく」
と言われているような気すらする。せめて皮を一か所に集めておいてくれればいいのに、わざわざ少しずつ別の場所に落としていくものだから、なおさらたちが悪い。毎年のことだから、もう半分あきらめている。
それでも、なぜか今年もまたブドウを育ててしまう。せっかく成った実を見ては、「今年こそは収穫までたどり着きたい」と思ってしまう。そんなささやかな期待を、ハクビシンはやすやすと打ち砕いてくれる。全て食べつくしていくわけではないとはいえ、腹が立つ。だが一方では、もはやちょっとした風物詩のようになってしまっている。
「今年も来たか」
と、どこか懐かしさすら覚える自分がいるのが、なんとも悔しい。放し飼いのペットだと思えば可愛くないこともないかもしれなが…。これは君の分、と分けておけばそれだけ食べてくれないか…そんなことすらも思う。できれば何か恩返しをしてもらいたいところだ。
そんなことを思いながら、今朝もせっせと皮を拾った。
とと、そんなことはともかく、ハクビシンの果樹被害などに遭われている方いらっしゃいましたら是非対策方法を教えていただきたいです。これをやったらハクビシンが来なくなった、ハクビシンはこれが嫌い、何でも良いです。
コメント